私の力は癒しの力。 
                        今それを使わずにいつ使うというの?                         
                        胸が痛い。胸が痛い。胸が痛い。 
                        封じていた痛みが零れ出る。 
                          ぽろぽろと涙と一緒に零れ落ちる。 
                        【夜の少女】 
                           「しっかり、して、私」 
                        涙声で呟くと、私は深呼吸を繰り返した。 
                          意識を集中する。 
                        
                        両手で印を結ぶと霊力が溢れてくるのがわかる。 
                          私はその手を司颯様の胸へと乗せた。 
                        ―――――これだけじゃ、足りない。 
                          もっと深いところまで私の霊力を届かせないと。 
                        躊躇ったのは一瞬。 
                        私はそっと司颯様の唇に自分の唇を重ねた。 
                        とくん、とくん、と心臓の音が聞こえる。 
                          少しだけずれて、遠くでも、とくん、という音。 
                          きっとこれが司颯様の心臓の音。 
                          私はゆっくりと霊力を注ぎ込む。 
                        とくん、とくん、とくん――――― 
                           
                          とくん、とくん、とくん――――― 
                        ずれていた心音が少しずつ重なり始め――――― 
                        とくん―――――…… 
                        一つに、重なった。 
                        瞬間、強く霊力が引き込まれる。 
                          司颯様の体が力を欲している証拠だ。 
                          惜しみなく分け与える。 
                          私の全ての力を、司颯様へと。 
                        そして、目を覚まして。 
                          ――――を救ってください。 
                        胸が痛い、胸が痛い、胸が痛い。 
                        神様。神様。ねえ、どうして。 
                        どうして私は……なんですか―――――  |