【未有】 
                         「ほらっ、ここ、すっごいきれいだよ」                         
                        【司颯】 
                           「ん?」 
                        そこから見えたのは眼前を覆うように咲き乱れていた桜たち。 
                          春独特のやわらかい風に運ばれてハラリハラリと桜が舞い落ちる。 
                        【司颯】 
                           「へぇ……」 
                          未有の奴よくこんな場所見つけたもんだな……でも。 
                          【未有】 
                           「にゅふふふふふふ〜〜〜〜〜〜〜♪」 
                          俺には桜の花びらに合わせてくるくるとダンスを 
                            踊る未有の方がもっと綺麗に見えた。 
                          ――はっ?! いかん、いかんぞ! 
                          ますます親バカが酷くなってるじゃないか!! 
                          娘に劣情を燃やすなんて俺はどうかしてるのか?! 
                          まさか……これがドーターコンプレックス。 
                        略してドタコン!! 
                          …………………… 
                          ……なんか慌しい結婚みたいでヤダな。 
                          【未有】 
                           「パパ〜〜、ほら、このさくら大きいね」 
                          【司颯】 
                           「えっ? あ、ああ」 
                        不意に話しかけられて思考を現実に戻す。 
                          【未有】 
                           「さっくら、さっくら、さっくらさん〜♪」 
                          【未有】 
                           「とってもおおきい、さっくらさん〜♪」 
                          よっぽど桜が気に入ったのか遂には歌まで歌いだしてしまった。 
                          こりゃあ落ち着くまで暫くかかりそうだな。 
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