そこには、式服をまとった夜の少女が立っていた。
涙を浮かべて、困ったように笑う。

【夜の少女】
  「……私は、どこにも行きませんよ、
綺來様―――――?」

綺來が顔を上げた。その顔にも涙が滲んでいた。
安堵に一瞬涙顔になるがすぐに満面の笑みを浮かべると、
綺來は夜の少女に飛びついた。
ぎゅう、と抱きつく。

【夜の少女】
 「綺來様……?」

【綺來】
  「やっと会えた。やっと見れた。
失敗したら、消えちゃうかと思った―――――」


【夜の少女】
  「私が綺來様の前から消えるはず
ないじゃないですか……」

夜の少女は困ったように笑うと、しがみつく綺來の
背中をゆっくりと撫でる。
綺來は何度も頷き、夜の少女に頬を摺り寄せる。

【綺來】
 「……あったかい♪」

【夜の少女】
  「綺來様も、あったかいですよ。
これで握手も添い寝も内緒話も思う存分できますね。
……ありがとうございます」

【綺來】
 「うぅん、お礼を言うのはわたしのほう。」

どれだけ綺來は一人ぼっちに耐えてきたのだろう。
どれだけ夜の少女はその綺來を心配に思ったのだろう。
それは、孤独だった二人が孤独では
なくなった瞬間だったんだろう。