そこには、式服をまとった夜の少女が立っていた。 
                        涙を浮かべて、困ったように笑う。                         
                        
                        綺來が顔を上げた。その顔にも涙が滲んでいた。 
                          安堵に一瞬涙顔になるがすぐに満面の笑みを浮かべると、 
                          綺來は夜の少女に飛びついた。 
                          ぎゅう、と抱きつく。 
                        【夜の少女】 
                           「綺來様……?」 
                        
                         
                         
                        
                        夜の少女は困ったように笑うと、しがみつく綺來の 
                          背中をゆっくりと撫でる。 
                          綺來は何度も頷き、夜の少女に頬を摺り寄せる。 
                        【綺來】 
                           「……あったかい♪」 
                        
                        【綺來】 
                         「うぅん、お礼を言うのはわたしのほう。」 
                         
                        どれだけ綺來は一人ぼっちに耐えてきたのだろう。 
                          どれだけ夜の少女はその綺來を心配に思ったのだろう。 
                          それは、孤独だった二人が孤独では 
                          なくなった瞬間だったんだろう。 
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