すると視線のその先には、今まさに白い装束を脱いで 
                        用意した服に着替えようとする春花の姿があった。                         
                        【司颯】 
                           「あ……」 
                        さらに気まずいことに、着替えの最中の春花とばっちり 
                          視線が合ってしまった。 
                        【春花】 
                           「…………」 
                        春花はきょとんとしていたが、やがて自分のおかれている 
                          状況に気付いて、頬を赤らめて視線を外す。 
                          おそらく彼女と出会ってから初めて見せる、 
                          その初々しい恥じらいの表情に司颯は釘付けになる。 
                        【司颯】 
                           (春花さんって、きれいだな……) 
                        容姿は幼い少女だが、頬を赤らめたその表情は 
                          一瞬どきっとするような色香を感じる。 
                          そのアンバランスさがまた司颯の視線を外らさせなかった。 
                        【春花】 
                           「司颯……さん?」 
                        恥らいながら春花が呼びかけるが、司颯は答えない。 
                          言葉もなく、ただ春花の姿を見つめ続けている司颯の 
                          視界を不意に何かが覆い隠した。 
                        【司颯】 
                           「へ!?」 
                        【綺來】 
                           「こーうーづーきーくーん……!!」 
                        司颯の視界を塞いだのは綺來が持ってきた紙袋だった。 
                        
                        おかんむりの綺來に指摘されてようやく司颯は我に返る 
                          ──これは紛れもなく「のぞき」ではないか。 
                        【綺來】 
                           「んもうっ、早く出て行きなさ──いっ!!」 
                        司颯が慌てて庵の外に避難すると、 
                          庵の戸がぴしゃりと閉じられる。 
                        【綺來】 
                           「着替え終わるまでおとなしくそこで待ってなさい!」 
                        【司颯】 
                           「わ、わかった……」 
                        結局司颯は庵の外で待機することになった。  |